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最高裁判所第二小法廷 昭和24年(れ)2514号 判決

主文

被告人金相麗の上告を棄却する。

原判決中被告人形野真太郎に関する部分を破棄する。

被告人形野真太郎を懲役六月に処する。

理由

被告人金相麗の弁護人金田茂就の上告趣意について。

所論は結局原審の量刑をもって、不当であると主張するものであって、刑訴応急措置法第一三条第二項により、上告適法の理由とならないものである。

被告人形野真太郎の弁護人金田茂就の上告趣意について。

所論は結局原審の量刑を不当なりと主張するものであって、刑訴応急措置法第一三条第二項により、上告適法の理由にならないものである。

しかるに、被告人形野の所為に対する原判決の擬律につき当裁判所職権をもって調査するに、昭和二十三年七月七日法律第一〇七号(施行公布当日)所得税法の一部を改正する等の法律第二三条をもって改正された、関税法第八二条の四の規定に依れば、その本文においては一応刑法第六三条従犯減軽の規定の適用を排除しているけれども、その但書において、前示関税法第七六条第一項違反の所犯者を懲役の刑に処するときは、刑法第六三条は尚その適用あるものと定めていることが明瞭である。しかるに、被告人形野の所為につき原判決の確定した事実に依れば、被告人の所為は右関税法第七六条第一項違反行為の幇助である事実を確定し且つその所定刑中懲役刑を選択しながら、その擬律において刑法第六三条同第六八条第三号を適用していないことは、原判決上明らかである。しからば原判決は右に関する擬律錯誤の違法ありと謂うべくそしてこの違法は判決に影響を及ぼすこと明らかである。仍って被告人形野に対する原判決を破毀し当裁判所自から判決すべきものであるところ、原判決の確定した事実を法律に照せば、被告人形野の所為は昭和二十三年法律第一〇七号所得税法の一部を改正する等の法律第二三条により改正された関税法第七六条第一項刑法第六二条に該当するから、その所定刑中懲役刑を選択し、仍って右関税法第八二条の四但書並びに刑法第六三条同第六八条第三号を各適用し、その刑期範囲内において被告人を懲役六月に処するを相当と認める。

以上の理由に依り、被告人金相麗に対しては刑訴施行法第二条旧刑訴法第四四六条、被告人形野真太郎に対しては刑訴施行法第二条旧刑訴法第四四七条同第四四八条に従い、主文のとおり判決する。

此判決は裁判官全員一致の意見に依るものである。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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